廃棄物か有価物かの判断基準
売れる物だから廃棄物ではない、とは限らない
廃棄物と有価物(他人に買い取ってもらえる物)では、法律上の取扱が大きく変わります。有価物は廃棄物でないため、当然廃棄物処理法の適用を受けません。委託契約書やマニフェストを運用する必要は無く、法律の煩わしい規制を全部免れることができるのですから、有価物と判断されることは大きなメリットと言えます。
ある物が廃棄物であるがどうかを判断するためには、まず、その物が不要物であるかどうかを判断しなくてはいけません。明確な判断基準がないと、大きなメリットを受けるために、恣意的に廃棄物処理法の規制を免れようとする人が沢山出てきてしまいます。
そのため、行政の法律運用としては、占有者の主観のみでなく、「取引価値」や「市場性の有無」などの客観的な要素を判断基準に加えた「総合判断説」に基づき、廃棄物であるかどうかを慎重に判断するようになっていますが、実際には「取引価値の有無」だけが重視されているのが現状といえます。
例として、1円で不要物を買い取ってもらった場合、有価物として認められるのでしょうか。1円でも売却をしている点に関しては、有価物として判断できる材料に成り得ますが、実際には運賃や保管費用など、売り手側が何らかの費用負担をする必要があるので、価値の有る物としてある物の売買を継続的に行うためには、1円という売却額では経済的に成り立たないことは明らかです。
実務上よく問題となるのが、売却額と運賃を比較し、運賃が売却額を上回る場合です。こちらのケースに関しては、2005年3月25日付で、環境省産業廃棄物課から、輸送費の取扱いに関する通知が出されました。
「廃棄物」か否か判断する際の輸送費の取扱い等の明確化
平成3年10月18日付け衛生平成三年一〇月一八日付け衛産第五〇号厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課産業廃棄物対策室長通知で示したとおり、産業廃棄物の占有者(排出事業者等)がその産業廃棄物を、再生利用するために有償で譲り受ける者へ引渡す場合の収集運搬においては、引渡し側が輸送費を負担し、当該輸送費が売却代金を上回る場合等当該産業廃棄物の引渡しに係る事業全体において引渡し側に経済的損失が生じている場合には、産業廃棄物の収集運搬に当たり、法が適用されること。一方、再生利用するために有償で譲り受ける者が占有者となった時点以降については、廃棄物に該当しないこと。
通知の内容を要約すると、売却代金が輸送費を下回る場合は、再生事業者が目的物を受け取るまでの間は廃棄物として扱い、目的物を受け取った後は有価物として扱って良いということとなります。
売れる物だから廃棄物ではない、でなく、経費が売却代金を上回る場合、売り手側が多少の損をしてでも不要物を目の前から消したいというのと同様になり、廃棄物として取り扱うのが適当ということとなります。
買い手側が引き取りなどを行い、売り手側に一切の費用負担が生じない場合、廃棄物ではないという扱いになります。